■小説/人間の建設
批評の天才、“小林秀雄”と、数学の天才、“岡潔”の史上稀に見る傑出者の対談です。
個性、本質、直観、歴史、一つ一つの主題には両者の培われた経験と鋭敏な感性をもとにして、会話が進んでいく。その会話の節々に魂の込められた両者の本質が垣間見える。
文系的頭脳、理系的頭脳、相容れぬ存在のように思えるが、決してそうは感じさせない根幹でつながる思い。それは持論のぶつかり合いではない、お互いの人生をかけて考え抜かれた本質のすり合わせ、そして仮説を持った質問には、さらなる知識の追求がみえる。
なんだか、二人はすごく楽しそうだ。初めて見合った二人なのだが、そうは感じさせない親しみ。もちろん会う前にお互いはお互いのことを最大限努力して知り準備し、そして相手に畏敬の念と人としての単純な興味を抱きながら、、、。
“どんな難問でも、その難問の解が導き出される過程に人の感情がなっとくしなければそれは解にならない。つまり、数学の世界にも人の感情が必要、あるということが分かった”
“問題を解く側から、問題を出すという時点で解という側に移る”
この世で唯一、客観的な指標はいつも数学の世界にあると思っていた僕が、
はじめてその客観的な数学な世界に気まぐれな感情の世界が在るというのを、
知った、衝撃を与えてくれた、いつまでも大切にしたい一冊です。
この本は私が出会った本の中で最も好きな本である。
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