■小説/病の葉流れて
2015年4月に亡くなられた、最後の無頼派とも呼ばれる白川道(しらかわとおる)さんの、自叙伝とも言える青春小説です。素敵でした。
学園紛争華やかりしころ、大学生の梨田雅之は、四浪二留で、同じ学生とは思えぬ虚無的なムードを持つ永田に出会う。彼に近づいた梨田が見たのは、マージャン博打の世界だった。
一流と言われる大学に入ったものの、
とくだんこれといった夢や目標がない
とは言え、周りと同調して学生運動に参加したり、
一変して就職活動に取り組むのは自身の生き方ではない
主人公のモラトリアムに光をさした博打の世界。
一瞬一瞬の勝負の世界に、生の実感をえる。
“やるなら、とことんだよ”
麻雀に競輪、先物取引、梨田は博打とともに裏の世界に流れていく。
博打と女、どちらも破滅の香り漂うその先に見えたものは、、。
有を基軸にして無を感じる者
無を基軸にして有を感じる者
作中に表現されたこの世界観に対して、主人公の梨田に後者を圧倒的に感じました。
生きることに大した意味はない、有難くもらったものだと思って生きればいい。
気張らずに生きていけば、自分を信じて、自分の直感を信じて。
様々な体験を経て直感が直観に変わる一瞬の煌めき。
博打という世界の中で純粋な心で勇ましく生きていく主人公。
無頼派のようで義理人情に厚く、自力の強さを感じる一方、人に生かされている。
そんな生々しい現実で生きていく世界の裏表なんて、
もはやどうだっていい、描かれているその主人公は力強い青春のヒーローである。
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