■小説/きみはいい子
とある東京区内にある桜ヶ丘小学校を中心にしておこる、新任の先生が担当のクラスで目の当たりにする学級崩壊の現場。育児放棄や虐待、障害を持つ子供と母親と学校の近所のおばあさん。日々の日常風景に埋もれる中にある光と影。“される側”だけでなく“する側”の心の問題にもスポットを当て、丁寧に描いたことで反響を呼んだ作品です。
現実で起こりうるであろう世界としてありのままに世界が見えてくる素直な文体と表現で、幸せなことも、不幸せなことも、一瞬に煌めく人間の生も、取り繕いなく描かれております。
だからこそ、作品が与える影響は、読者の今に対して直球で入ってきます。現実を直視したり、読むのが苦しくなったり、共感したり、比較したり。
人それぞれの人生や幸不幸、実際はこんな辛い人生を歩んでいる方もいるんだ、私の今はずっと幸せものなんだ、私の今はそう感じました。
その中でも人間として万人に共通するような幸せの住処が、この本にはつまっている、そう思います。
“あの子の目にあたしが映っている間だけは、わたしがこの世に、間違いなく生きていることを感じられた。”
人の記憶というのは、辛いことも幸せなことも、その出来事が凝縮されていればされているほど脳内にこびりつき、新しい行動を前にして既視感として前に出てくる天使でもあれば悪魔にもなる。
そんな記憶があるから人の主観や人生は構築されるようですが、
私は、自分がしたことの記憶より、人からされたイイ記憶を大事にしたい、
そして、人からされたイイ記憶になるような行動を私自身が日々心がけたい、
そうこの本を読んで思いました。
2015年6月末に映画化もされており(都内などの一部で上映?!)話題の作品になっているので、ご興味のある方は是非。
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